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2019年5月、参議院本会議で 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案」 が可決されました。この法律案は労働環境で起こりうるハラスメントを防止するため、その対策や対応を義務付けるよう労働に関する法律を改正するもので、 「パワハラ防止対策関連法(ハラスメント規制法・ パワハラ防止法 )」と呼ばれています。
パワハラ防止義務の内容は、労働施策総合推進法の改正によって、同法律内に規定されました。
(1)パワーハラスメントとは -職場のパワーハラスメント-
職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいいます。
職場での優位性
上司から部下へのいじめ・嫌がらせをさして使われる場合が多いですが、先輩・後輩間や同僚間、さらには部下から上司に対してなど、「職務上の地位」に限らず、人間関係や専門知識、経験などの様々な優位性が含まれます。

(2)「パワーハラスメントの分類」
厚生労働省はパワハラは大きく分けて以下の「6つ」に分類できるとしています。
職業・職種によって、「どこからどこまでを適正な範囲としておくか(になるのか)」は異なってくると考えられます。
1.身体的な攻撃 被害者を直接的に殴る、蹴るなどの行為もしくは、書類や備品を投げつける、立ったまま電話営業をさせるといった行為。
2.精神的な攻撃(=モラルハラスメント) 仕事のミスに対して、他の従業員の前で必要以上に叱責したり怒鳴り散らしたりする行為や、「バカ」「クズ」といった暴言や「給料泥棒」「辞めてしまえ」といった本人の社員としての地位を脅かすような言葉。
3.人間関係からの切り離し 特定の社員だけ会議に呼ばれない、業務に必要な情報を共有されない、席を隔離されるなど、仲間外れにするよう稚拙な行為も仕事を円滑に進めるうえで必要のない行為。
4.過大な要求 入社や異動間もない社員に対し、処理能力を超える業務量を押し付けたり、達成不可能なノルマを課したり、業務上のミスについて見せしめのため始末書の提出をさせるような行為。また、休日前の業務が終了する間際に、休み明けの始業までに資料を作成し提出させる行為や、またそれができなかった場合、「役立たず」「クビだ!」などの言葉の攻撃を加える行為。
5.過小な要求 業務を与えなかったり、本来の業務とは関係のない仕事(例えば、運転手として入社したにも関わらず、掃除ばかりやらせるような行為)を指示する場合。※継続的であるかどうかといったポイントも判断の基準となるので、確認が
必要。
6.個の侵害 プライバシーの侵害。例えば、労働基準法上、年次有給休暇の取得に当たり、社員が休暇の理由を申出する必要はないにも関わらず、必要以上にその理由を聞いたり、理由を明確にしない限り、休暇を与えないとするような行為。また、私生活についての批判や終業後に電話やメールで呼び出しをする行為。

(3)パワーハラスメントにあったら
1.どんなことをされたのか記録する
パワハラと思われる行為をされた場合は、いつどこで誰が何を何のために(5w1h)したのかを記録しましょう。後々の事実確認などで有効なので、メモや録音など最適な方法で記録を残すことをお勧めします。
2.周囲に相談する
パワハラは我慢していても解決しません。それどころかエスカレートする可能性があります。一人で悩まず、まず同僚や上司に相談しましょう。周りの協力を得ることで、パワハラを行う本人が自らの行為に気づく場合があります。
3. 会社の窓口や人事担当者に相談する
上司に相談できない場合は、人事部や社内相談窓口に相談しましょう。会社等の組織は、相談者が不利益にならないよう、プライバシーの確保を配慮することを求められています。
4.外部の相談窓口に相談する
社内に相談窓口がない場合や、社内では解決できない場合は、外部の相談窓口に相談しましょう。全国の労働局・労働基準監督署にある総合労働相談コーナーは、無料で相談を受け付けており、電話でも相談できます。
(参考)関連する法律の改正内容
「パワハラ防止対策関連法(ハラスメント規制法・ パワハラ防止法 )」は、下記の法律に関する改正を含んでいます。
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労働施策総合推進法
(正式名称:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)
⇒パワハラ防止措置の義務化 の明記、パワハラ防止対策の法制化・パワハラ防止措置等の実施義務の創設
⇒2020年6月1日(中小事業主は令和4年3月31日)~
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女性活躍推進法
⇒女性活躍推進のための行動計画策定等義務企業の対象を拡大、行動計画策定・情報公表義務の対象拡大
⇒2022年4月1日~
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男女雇用機会均等法
⇒セクハラ・マタハラに関する相談や訴えを理由とする不利益な取扱いの禁止、就活生・取引先等の「社外の関係者」とのセクハラに関する措置 など セクシュアルハラスメント等の防止対策の強化
⇒2020年6月1日~
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労働者派遣法
⇒パワハラ防止措置について、派遣先事業主も「派遣労働者を雇用する事業主」とみなす旨の追記
育児・介護休業法
⇒育児休業・介護休業等に関するハラスメントの相談・訴え等を理由とする不利益な取扱いの禁止など セクシュアルハラスメント等の防止対策の強化
⇒2020年6月1日~